バックナンバー‎ > ‎16集1‎ > ‎

16集2

走馬灯          胡月嬌

校友会八十路を又も集ひ来て友ら穏しく歳月酷く

生まれしより日時は死へと続き居り己も己もの二度となき生命

互みなき幾何もなき余生なり心致して短歌(うた)は詠むべ

若き日の几帳面さは何處へやら老いもたもたと時間の長さ

唖となる独り居の日々テレビにも歌誌にも倦みて老い深めゐる

陽光の今日の異状を訝かれば颱風警報テレビが流す

音もなく性懲りもなく降る雨よ明日の歌会晴れくれよかし

颱風は嘘の如し照りつくる強き陽差しは吾がもの顔に

八十路坂日々の起居の辛さ増すこのせんなさも只耐へるのみ

ぼろぼろと芥の如き老いの身の捨つるも得せず今日も時遣(ときや)らす

老醜はさらさずひそと逝くべかり学舎の日々憶ひ出永遠(とは)

一生(ひとよ)く走馬燈とし巡れども黙し逝くべし一粒真砂(ひとつぶまさご)

 

 

 

国慶日        呉戀雲

台湾は「中華民国」建国の百年祝ふ十月十日

台湾は「中華民国」旗の色青天白日満地紅なり

民主なる「中華民国」百年の国慶祝ひ万歳叫ぶ

建国の百年祝ふ花祭り島の平和を神に感謝す

先人の築きし民主台湾よ皆団結して国を守らん

台湾の明るき未来祈りなば心は一つに希望に満つる

台湾の次の世代の子供等よ道徳守り国を守らん

百年の国慶祝ひ国歌をば高らかに唄ひ平安祈る

中秋の月を仰ぎて台湾の栄えを祈り短歌をば詠む

戦争もなき平和なる世となるに殺人のニュース何故に絶えざる

戦争で運命変りし台湾の民主を誇る台湾歌壇

短歌にて時代を謳歌し歌友は島の平和を祈りて止まず

 

 

 

海山の美景                   呉順江

朝の陽は峯の彼方に白めども山静まりて夜明けを知らず

しろがねの雪降る山は寂として(しはぶ)きさへもさびしく聴こゆ

仙人の住みゐるらしき奥山の霊気清しく身に沁みわたる

サラマオの奥なる宿はしんとしてあかり温とき吾が家を思ふ

まばらなる枯葉を枝に残しゐる白樺細くしばれて立てり

もみぢ狩り根方に落ちし葉を拾ひ枝には触れず目もて娯しむ

ふり仰ぐ富士の高嶺の気高さを胸に残して忍野を去りぬ

満山のみどりしたたる竹林を抜け出で仰ぐ空に雲なく

朝ぼらけ浜の白砂踏み行けば海の香りの胸に沁みつく

緑蔭にしばし佇み涼風に肌を任せて暑さ忘るる

山荘の雑魚寝もたのし「く」の字あり「大」の字ありて寝相さまざま

旅に出で感慨多き海山の美景をすべて胸に映せり

 

 

 

老いの日日                      高淑慎

老いたれば視力衰へ外出に一人歩きの心許無し

シグナルの青を確かめ夫の手に引かれて急ぎ街路横切る

仲良しと人にや映らむ手つなぎて十字路渡る老いの二人を

三十年前の家計簿現はれ身の周りの整理は遅々として進まざり

黄ばみたる家計簿見れば大学の子らへの送金大半を占む

誰それの結婚祝ひと読みつぎて吾娘の渡米の日付け見つむる

歌会の会費二百元に目の止まり初に参加の日の甦る

台湾に歌壇のあるを知らざりき友の誘ひに怖づ怖づ参加す

締切の日に日に迫り短歌成らず米を研ぎつつ頭で五七五

七元の切手とハガキ買ひ溜めて歌稿の投函何時も速達

この月日心の起伏をひたすらに詠み継ぎ来しを慰めとせむ

短歌ありて老いの今日あり歌会に誘ひくれたる友よありがたう

 

 

 

現か夢か                     江槐邨

野に寝転び上昇気流に悠悠と弧えがく鳶を眺むる夏の空

燃ゆる様な酷暑過ぎ去りすがすがし秋風に仰ぐ仲秋の月

横殴りの嵐に洗ひ清めらるる窓に差し込む日影明るし

爆音に驚き醒めぬ厳寒の夜哀れみをり暴走族を

本分を守り毎日を均しくに過ごす人生明るく晴れ晴れ

ふと浮ぶ歌に跳ね起きあれこれと頭を捻る夜の静寂を

すがすがしき秋風に芒靡く山登れば知らざる虫の鳴きをり

白テロの苦を共に嘗め老いて共に短歌詠みたる君逝きて侘し

咲き終へる胡蝶蘭の花見捨てずに窓辺に育てていつしか青青

病院にリハビリ受くる赤子一人宥むる親に人形も加勢

帰省の娘を見送るエアポート去りゆける後姿の殊更侘し

川原に星仰ぎ友と語りたる四方山話も返らぬ憶ひ出

 

 

 

老いの獨言(ひとりごと)   黄華浥

台湾の独立待ちて幾十年未だ成らざるを爺々老いて行く

我も見し日本各地の桜花シナ人にされし悔い引きずりて

桜花「散るべき時に清く散り」我は唄ひし我は学びし

我が庭に桜は無けれど白百合に桔梗アマリリス咲き継ぎてをり

緑なす山波仰ぎ吾が村を自転車引きつつ爺々のろ歩く

老いたれば歩く姿もくの字なり何故にか腰の(ちから)の抜けて

月一度聚ひて語る歌会ぞ風呂に身をば清めて明日を待つ

老ゆるとはかくなるものか足腰の力の抜けて爺々のろ歩く

台湾に馬鹿たれ多く今尚もあの馬支持か如何にとやせん

「神楽舞」八幡神社の里山の日本文化は強く生きをり

日の本は我の心の祖国(ふるさと)よあの戦に負けてくやしき思ひ

我が居間の日の丸の小旗日台の文化交流に貰ひし記念

Comments