台湾高座会第二十四回嘉義大会 三宅章文
高座会会歌「故郷を離れて」を歌へば浮かぶ人のおもかげ
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ご夫妻と台湾正名叫びつつともに行きしよ凱達格蘭(ケタガラン)大道
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年ごとに北に対ひて新年の礼を捧げし人の恋しき(洪坤山氏へ)
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甲府第六十三連隊に入隊し大空襲下獅子奮迅す
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年ごとに日本を訪ひて恩師の墓詣でたる人に会ふよしもがな(宋定国氏へ)
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「海ゆかば」流るるなかを今は亡き好友追思の黙祷捧ぐ
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黙祷のしじまの底ゆこもりつつ歌声湧けり「顧みはせじ」
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紅顔の李雪峰氏も挺身隊佐野た香女史も八十路なかばに
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老台北「朝日に匂ふ桜花」口ずさみ給へば夫人も和さる
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台北の夕べしみじみお二人のあざみの歌を聴きゐたりけり
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(黄昭堂台湾独立建国聯盟主席急逝を聞きて)
台湾の西郷どんと慕はれし巨星墜つると聞くはまことか
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台湾が台湾国になる日こそ大人がまことの命日ならむ
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目指すは米寿 姚望林
朝まだき佛の前に座禅くむ八十路のわれと六十路のわが子
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小春日和に寄り添ひて見る散る花を残りいくばく老いの二人は
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歌会の詠草手書きゆプリントに一目瞭然三宅さんのウィット
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晩酌のワインを妻も微笑みてグラスを交はす今宵の幸を
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和歌一首掛軸にして子孫らに残さむと日々書道に励む
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目覚むれば己が書きたる古里の和歌の掛軸しみじみ眺む
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喜寿傘寿過ぎて目指すは米寿なり現し世に我が悔いのなくして
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兄弟とも六月六日が誕生日兄が米寿で我は八十六
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北陸の大地震津波千トンの船まで陸上げこの世の地獄
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大津波海陸ともに襲ひくる人家流され阿鼻叫喚ぞ
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国挙げて未曾有の国難対処する大和魂存亡の秋
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東北の大震災に民悩む厳しき寒さ乏しき物資
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夏日に燃えて 游細幼
百日紅緋にあふれ咲く夏の庭午後の日射しは眠気を誘ふ
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真夏日にじつと動かぬ百日紅あふれ咲く緋に視界めぐらす
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くれなゐの夢の中なる百日紅の香りはうつつ庭より匂ふ
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炎熱の夏日に揺るる百日紅日々くれなゐの花をこぼして
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うすら日に霞たなびく遠山を見放くる今朝の風情見飽かず
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さるすべり歳々年々花は似て咲けども人は歳老いてゆく
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駈けてゆく童らの手にもつ風車春の光を切りて廻れり
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昼は咲き夜は眠れる合歓の花明日の希望を夢見るごとく
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狭き庭いつぱいに咲き匂ふかな孤独にあらず梔子の花
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母子草と親しき名にて呼ばれしも庭の雑草と抜かれ捨てらる
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不条理の言葉に痛みおしよする心の波よ孤独なる時間
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争はず批判のままに任せたり後悔なしとばかりも言へず
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島根美はし 李英茂
満場の熱気溢るるのど自慢台湾の空響けとばかり
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ふかぶかと頭を下げて礼をする小林幸子の「ありがとう台湾!」
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若者のわれを見つむる目潤みてシャツに書きたる「感謝(カムシャ) 台湾(タイワン)」
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荒波をものともせずに海泳リレー親善大使の日本より来たる
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相思樹に傘杖そつと立てかけて老いもうちふるいのちの体操
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台風(かぜ)吹けばそぞろに胸の高まりて眠りもやらぬ海の遠鳴り
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草むしり葉裏くまなく除虫せば返り咲きたる報恩の花
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ハイビスカス地下より歓喜湧き出でて咲きも咲きたり七、八、九、十
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へちま棚へのへのもへの落書を思ひ出させるスーパーのへちま
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杳き日の童話をふつと思はする空にかけたる七色の橋
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百歳のトヨよりもらふ元気には風と陽射しと「くじけないでね」
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フォルモサの島根美はし玉峯に登れば慈光(ひかり)輝き満つる
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しかと掴めり 頼淑美
豪雨止み入り日緑に際立ちて光ればしばし暑さ忘るる
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淡雪の降り敷きたるか白妙の覆ひてあるか桐の花散る
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花びらの散りたる後の芯幾つ侘しくもなほ天見上げたり
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陽は昇り新しき朝風唄ふ空輝きて谷目覚めゆく
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時雨止めど雲なほ低くし北風のひんやりとして夕暮迫る
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夕焼に光る黄金の雲の上を滑り静かに飛行機は行く
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遮るものあらざる夜半を照り渡り月は見守る銀色の海
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やうやうに暗くなりゆく海原の底より湧き出づる波の畏し
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七十路の姉妹集ひて飲むコーヒー涙と笑ひの入りてうましき
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山茶花にしづけき冬の光射し海風の中吾子は眠れり
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頼りたき心忍びて己が事自らなすは老いの才覚
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暖かき布団の中に手を組みてしかと掴めりこの幸せを
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一期一会 劉玉嬌
乙女子雅妮台湾の名を押し上ぐるゴルフ・コンペ嬉しきニュースよ
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父偲ぶ澎湖島の通粱海蒼し白沙の浜の貝がらひろふ
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一期一会又のおとなひ夢にみる逆らへぬ齢の思ひ出なつかし
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ふるさとの海よさやうならかく呼びし言葉は今も胸に秘めたり
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窓口で順番札のルール知らず立ちつくせばすつと札渡さるる
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さりげなき人の親切にふり返る気がつけば礼の云はずじまひに
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廃駅の素朴な茶店に憩ひたり木蔭に並ぶは骨董品の椅子
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レール越し見はるかすたんぼ青青と一年(ひととせ)前の大埔もかくや
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真夜中に現代の恐竜ショベルカー大埔のたんぼ潰しつくせり
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凄まじき景の展開農民の叫びポリスら一列にみてゐる
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支那馬にへつらふ農会を筆頭に恥外聞無きKMTの面面
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同年輩阿扁の母御の涙するを折に触れ見て胸えぐらるる
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