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16集10

台湾高座会第二十四回嘉義大会 三宅章文

高座会会歌「故郷を離れて」を歌へば浮かぶ人のおもかげ

ご夫妻と台湾正名叫びつつともに行きしよ凱達格蘭(ケタガラン)大道

年ごとに北に対ひて新年の礼を捧げし人の恋しき(洪坤山氏へ)

甲府第六十三連隊に入隊し大空襲下獅子奮迅す

年ごとに日本を訪ひて恩師の墓詣でたる人に会ふよしもがな(宋定国氏へ)

「海ゆかば」流るるなかを今は亡き好友追思の黙捧ぐ

しじまの底ゆこもりつつ歌声湧けり「顧みはせじ」

紅顔の李雪峰氏も挺身隊佐野た香女史も八十路なかばに

老台北「朝日に匂ふ桜花」口ずさみ給へば夫人も和さる

台北の夕べしみじみお二人のあざみの歌を聴きゐたりけり

(黄昭堂台湾独立建国聯盟主席急逝を聞きて)

台湾の西郷どんと慕はれし巨星墜つると聞くはまことか

台湾が台湾国になる日こそ大人がまことの命日ならむ

 

 

 

目指すは米寿                    姚望林

朝まだき佛の前に座禅くむ八十路のわれと六十路のわが子

小春日和に寄り添ひて見る散る花を残りいくばく老いの二人は

歌会の詠草手書きゆプリントに一目瞭然三宅さんのウィット

晩酌のワインを妻も微笑みてグラスを交はす今宵の幸を

和歌一首掛軸にして子孫らに残さむと日々書道に励む

目覚むれば己が書きたる古里の和歌の掛軸しみじみ眺む

喜寿傘寿過ぎて目指すは米寿なり現し世に我が悔いのなくして

兄弟とも六月六日が誕生日兄が米寿で我は八十六

北陸の大地震津波千トンの船まで陸上げこの世の地獄

大津波海陸ともに襲ひくる人家流され阿鼻叫喚ぞ

国挙げて未曾有の国難対処する大和魂存亡の秋

東北の大震災に民悩む厳しき寒さ乏しき物資

 

 

 

夏日に燃えて     游細幼

百日紅緋にあふれ咲く夏の庭午後の日射しは眠気を誘ふ

真夏日にじつと動かぬ百日紅あふれ咲く緋に視界めぐらす

くれなゐの夢の中なる百日紅の香りはうつつ庭より匂ふ

炎熱の夏日に揺るる百日紅日々くれなゐの花をこぼして

うすら日に霞たなびく遠山を見放くる今朝の風情見飽かず

さるすべり歳々年々花は似て咲けども人は歳老いてゆく

駈けてゆく童らの手にもつ風車春の光を切りて廻れり

昼は咲き夜は眠れる合歓の花明日の希望を夢見るごとく

狭き庭いつぱいに咲き匂ふかな孤独にあらず梔子の花

母子草と親しき名にて呼ばれしも庭の雑草と抜かれ捨てらる

不条理の言葉に痛みおしよする心の波よ孤独なる時間

争はず批判のままに任せたり後悔なしとばかりも言へず

 

 

 

島根美はし                     李英茂

満場の熱気溢るるのど自慢台湾の空響けとばかり

ふかぶかと頭を下げて礼をする小林幸子の「ありがとう台湾!」

若者のわれを見つむる目潤みてシャツに書きたる「感謝(カムシャ) 台湾(タイワン)

荒波をものともせずに海泳リレー親善大使の日本より来たる

相思樹に傘杖そつと立てかけて老いもうちふるいのちの体操

台風(かぜ)吹けばそぞろに胸の高まりて眠りもやらぬ海の遠鳴り

草むしり葉裏くまなく除虫せば返り咲きたる報恩の花

ハイビスカス地下より歓喜湧き出でて咲きも咲きたり七、八、九、十

へちま棚へのへのもへの落書を思ひ出させるスーパーのへちま

杳き日の童話をふつと思はする空にかけたる七色の橋

百歳のトヨよりもらふ元気には風と陽射しと「くじけないでね」

フォルモサの島根美はし玉峯に登れば慈光(ひかり)輝き満つる

 

 

 

しかと掴めり                   頼淑美

豪雨止み入り日緑に際立ちて光ればしばし暑さ忘るる

淡雪の降り敷きたるか白妙の覆ひてあるか桐の花散る

花びらの散りたる後の芯幾つ侘しくもなほ天見上げたり

陽は昇り新しき朝風唄ふ空輝きて谷目覚めゆく

時雨止めど雲なほ低くし北風のひんやりとして夕暮迫る

夕焼に光る黄金の雲の上を滑り静かに飛行機は行く

遮るものあらざる夜半を照り渡り月は見守る銀色の海

やうやうに暗くなりゆく海原の底より湧き出づる波の畏し

七十路の姉妹集ひて飲むコーヒー涙と笑ひの入りてうましき

山茶花にしづけき冬の光射し海風の中吾子は眠れり

頼りたき心忍びて己が事自らなすは老いの才覚

暖かき布団の中に手を組みてしかと掴めりこの幸せを

 

 

 

一期一会        劉玉嬌

乙女子雅妮台湾の名を押し上ぐるゴルフ・コンペ嬉しきニュースよ

父偲ぶ澎湖島の通粱海蒼し白沙の浜の貝がらひろふ

一期一会又のおとなひ夢にみる逆らへぬ齢の思ひ出なつかし

ふるさとの海よさやうならかく呼びし言葉は今も胸に秘めたり

窓口で順番札のルール知らず立ちつくせばすつと札渡さるる

さりげなき人の親切にふり返る気がつけば礼の云はずじまひに

廃駅の素朴な茶店に憩ひたり木蔭に並ぶは骨董品の椅子

レール越し見はるかすたんぼ青青と一年(ひととせ)前の大埔もかくや

真夜中に現代の恐竜ショベルカー大埔のたんぼ潰しつくせり

凄まじき景の展開農民の叫びポリスら一列にみてゐる

支那馬にへつらふ農会を筆頭に恥外聞無きKMTの面面

同年輩阿扁の母御の涙するを折に触れ見て胸えぐらるる

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