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15集8

二二八にまた思ふ                 鄭埌耀

標識は鮮やかに立ち血の染みし跡地凄愴 湯徳章公園

日領時の秩序に馴れて為政者は民(も)るものと思ひし迂闊

大陸の紅包文化に席捲されて日本育ちの周章狼狽

国共の闘争の続き戒厳令賠償は台湾がと国民党の詭弁

人命を弄する快感蒋介石は死刑死刑としきり加筆する

汪精衛の墓を爆破せし蒋介石己は他所に棺入りのまま

夫々に日本語育ちの老人学校お早よう遅刻さよならが残る

エレベーターの乗員過剰に追ひ出されドアの閉まるに思はず会釈

これはそも善行なるかや掛かりたる鼠を空地に放生をせり

ハイヒールの真白き足首名を呼ばれ神経内科にひらりはいれり

繕ひの縫ひ針に指を刺されけり小さき事件に大き忿懣

家を出でトルストイの如く野末にて死なむと言ふを妻驚かず

 

 

 

東北関東大震災                 花城可裕

懸けまくも畏き辺りにおかれてはスリッパだにも召され給はず

民救ふ自衛隊ほどありがたき軍隊はありや歴史の上にも

民人を避難させむと殿(しんがり)にありて警官波に呑まるる

福島の身を顧みず原発に逝きし技師には妻もあるらん

津波避け孤立してなほ嬰児を囲み暖むる人の心根

さまよへるはらから如何に居ますらん今宵の月を如何に眺めん

身籠りし(な)ねのみ霊安らけく天に昇るを伏して祈らん

異国のその日暮らしの民人の浄き義捐の玉の心根

あたたかき諸国人の真心は Pray for Japanの一語一語に

ARIGATO は言ふに及ばぬ友軍の(そち)は言ひけり斯くの如くに

大地震に痛む心を慰むる台湾人の祈る姿は

地震鎮むる岩石の群据ゑ直せ鹿島の神よ萬古不動に

 

 

 

四月の地球日に因みて「泥の祈り」        潘建祥

土に立ち天を仰ぎて今一度神の大愛を深く土に聞く

己が身は妙なるみわざに造られし土器(つちうつわ)なれば神はいのちなり

まことなる全能の神は父なれば常に聞き給ふ「泥ん子」の祈りを

ひとの身は神の形に「造られたる」を確かと教はる妙なるいわれを

天の下ありとあらゆる見ゆるもの終末遂げば全て土に帰す

もろもろの命を育む大地球無限の満しは永久に尽きせぬ

人が撒く汚物毒物いとはなく吸ひて同化する土は愛なり

おみやげは土を付け書くお土産と土も訛れば父と聞え来る

テラマイシン「テラ」なる二字は土の意と癒しの土と我は思ふなり

人は謂う農家を指しては土百姓土でさげすむはいかに情なく

人が立つ基礎と基盤を土台と謂ふ土を愛して土に口付けを

人たるは神のみ姿で人らしく活きて来しかと畏みて問ふ

 

 

 

原発其他                     潘達仁

福島の原発事故の恐ろしさ台湾電力は鑑にせずや

従らに安電力を追ひ民の危険観りみぬ政府と財団よ

台湾に原発事故の起こりなば放射塵が全島を覆ふ

台湾に原発事故の起こりなば漁業壊滅経済崩壊

漸くに目覚めし人らのデモ行進反原発の起動ならぬや

サルビヤが火の海を成す園に来て水仙を買ふ旧正の師走に

有毒の高山植物毛地黄五株ばかりが客の眼留む

寒波来て凍えるやうな丘の上に野バラの花が艶めき見する

招くごと咲き盛る花の棘固く近寄り難きピンクの野バラ

冬将軍何の未練か晩春に行きつ戻りつ冬着仕舞へず

咲き盛るつつじの群に近寄れば囁く如くそよ風の吹く

棵木となりし桑の木を仰ぎ見る小鳥のなきかと冬の丘の上

 

 

 

哀しみ秘めて                    傅仁鴻

流れ星不意にはしりて闇に消ゆ思ひ果たせぬ哀しみ秘めて

吹く風は木々の緑と遊びつつ地球をめぐる旅をしてゐる

朝覚めし春の枕で小鳥らの囀りを聞く鄙に住みし日

涯しなき野原の涯に日は沈み遥かまたたく一つ星あり

君われを離りしと知りたる日に木は花咲かせ日の光を浴ぶる

台湾が国の名となるわが願ひかなふるまでは死なじと決むる

台湾と支那は氷と炭火だよ愚か者だけ統一を言ふ

ああ晴れて明るい朝だ馳けてくる小犬の首の鈴は響くよ

さはやかに遠ざかりゆく夏景色見て乗るバスは夕日に向ふ

流れゆく白雲木々の葉はそよぐあの峰さして元気で登ろう

ふとよそみをした瞬間われ夢の行方落せり哀れよわれは

眼をあげよ家の木は君待ちわびて語るが如く枝そよぐなり

 

 

 

手の温もりよ                 毛燕珠

地は畑に土の無ければ水耕と百姓は知恵出し緑を作る

しののめの大漁の船に干しスルメずらり並びて旅客を招く

色香毎区切られ並ぶリンゴたちフルーツショップのいとうらやまし

古き里黒と白との家並みに乙女等の傘彩りひらら

空青く野原緑に屋根赤し二人で居れば仙境のやう

日本を未曾有の津波襲ひ来る乱れたる世に神の怒りか

災ひにめげぬ大和の国民の秩序よろしく世界の鑑

ユーモラスな夫の指図に墓参り済ませば春の風やはらかく

葉桜に青空高く並び立つ一〇一のロマン我が台北市

去年豊年終へて今年も筆を手に短歌の神殿目掛けて進む

つなぎたる手の温もりよいつまでも君と我とは命の限り

遅咲きの花にはあれど香しく広く遥けく四方に漂ふ

 

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