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15集6

一瞬の津波  荘淑貞

一瞬の津波に家財奪はれし大和の災民復興祈りて

災難に遭へども秩序乱れなき大和の人人教養高し

大地震津波原発の災難に遭ひし皆様の健康祈る

ガソリンもなき避難所は寒からむ一日も早き復興祈る

例年より寒波激しく綿入れの工場休まず夜業続くる

寒波過ぎ春うららの日長びきて湿り気の服ベランダに干す

我が孫は破れしジーンズ誇らかに我は埋めたし敗れたる穴

一握りの子らが貰ひし握り飯家族分けあふ戦時の苦しさ

戦乱の暮らし孫等に聞かすれば「日の丸弁当食べて見たい」と

終戦の喜び束の間民国に変はり殺人白色恐怖

名を呼べど永遠に答へぬ我が叔父は高千穂丸で魚雷に逝きし

我が叔父と肩を擦れあふ銀ぶらよ永遠に帰らぬ我が叔父恋し

 

 

 

憂鬱なこの日頃                   荘進源

流刑にも似たる受難の台湾人自由と民主求めて直走

台湾のストックホルム症候群目を覚ませよと只管祈る

台湾は試行錯誤を繰り返し植民地より民主国へと

嘘吐きでのつぺり顔の総統を選びし人よ地獄に嵌る

M九の地震津波は原発の放射線漏れを引き起したり

原発の放射線漏れを阻止せんと決死の覚悟五十の勇士

未曾有なる原発事故に立ち向かふ五十の勇士に神の加護あれ

大津波と原発事故に見舞はれし大和の国よ早き復興を

大金を払ひて付けし「大金」は我家の気候をつつがなく守る

十代に丸暗記せし名文は漢文調の教育勅語

夜更けて書斎にて聞く渓谷のせせらぎのリズム吾を酔はしむ

老いの兆し何時しか我が身に忍び寄り遂に耳遠き日日となりたり

 

 

 

六根清浄   田上雅春

新高の山ゆり昇る天つ日に新たなる世の幕開け覚ゆ

春霞その源を尋ぬれば支那ゆり飛来る黄砂なりけり

麗らなる春とし思へど霞立つ元が支那ではうたてかりけり

春雨の降りみ降らずみ暮泥む里の黄昏狭霧に煙る

類なき大地震揺るも天地の戒めなりと省みざれば

辛卯の荒れ荒れたりし水無杯の須恵の蓋火に揺るる怪しさ

蓋火かも此処の火なるか不知火の筑紫の日向立花の小戸

嘗て無きこの国難を如何にして乗越え行かむ秋津洲人

六の根を胸とは云はむ陸奥の根の禍清浄(わざわひきよ)めて復興(おこ)す福島

一二三こそ万物(すべてのもの)(はじめ)なれ足すも掛くるも成るは六なり

言霊の幸さながらに数霊の奇微(くしび)玄妙(たへ)なる道理(ことはり)を知る

数霊の道理知らば来るべき世も易々と乗越え行けむ

 

 

 

こころはひとつ                 舘量子

「我が友よ日本は必ず立ち上がる」心はひとつと元日本人

台湾の祈り想いよ海渡り被災地の不安力に変えて

一点を見つめ手の杖持ち直し「日本信ず」と目を潤ませて

「日本は故郷以上」と下を向き眉間にしわを寄せる横顔

今はただ祈りの力を信じます日本人に爺に笑顔を

大丈夫話さなくてもわかるよと目を只見つめるICUに

爺ちゃんの方に手を添え耳元で話し続ける今週のこと

日本より押し花届く靖国の同期が来たよと爺励まして

国籍も年代も越え月ごとに絆深まる台湾歌壇

台湾の明るい未来がはっきりと見える希望の新高山百合

温かい拍手が会場つつみ込む心は一つ台湾歌壇

歌会で会えない寂しさ募ります只ただ祈るご病気快復

 

 

 

色即是空   陳皆竹

十日後に燃えつくるとは露知らず市長選には投票と言ひし

何時ものの入退院と高くくりよもや此度は永久に行くとは

泣かないで写真の中に居りません彼岸で妻は待ってをります

現世は「色即是空」や亡き妻は一握りの粉骨壺の中

再びは犬を飼ふまじ人語をば解せし老犬遂に去りたり

百元で十一足の支那ソックス工場の女工の生活を思ふ

老友の霊柩車は今滑り出す斯くて我らは終焉さようなら

計らずも四十年前の観客より性能褒めらるエンジニヤ冥利

新旧の一週間分の下着類孤独に廻る洗濯機の中

大戦にて殖民地みな独立せり負けたる日本聖戦と叫べる

古釘を拾ひて売りし昭和の日蜜豆一杯五銭玉飛ぶ

老妻のへそくりで買ひし按摩椅子家中の老弱恩恵を受く

 

 

 

学会に参加した想ひ出               陳珠璋

東京の団体治療学会に秋空晴れて豊かな心地

北欧の人情厚きオランダで学識満たし友情かたむ

台北の冬と異なりメルボルンの暖かき春気分朗らか

カナダにて台湾代表理事になり光栄保つ二十年間

地主役台北負ひし第三回地域会議の責任果たせり

遥かなるブェノスアイレス訪れて論文発表好評を受く

君逝きて金婚旅行の夢消えし涙ににじむロンドンの旅

なつかしき言葉通ずる日本へ君と誓ひし旅我独り

地中海眺めうるはしエルサレムユダヤ人との交はり深し

欧州に近き中東イスタンブール田舎の景色をめでつつ歩む

大学の慈友(とも)と四十年振りに会ふなつかしきかなブラジルの

名残り惜し杖をたよりにローマ行心臓疲れ二度と行けぬ旅

 

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