一瞬の津波 荘淑貞
一瞬の津波に家財奪はれし大和の災民復興祈りて
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災難に遭へども秩序乱れなき大和の人人教養高し
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大地震津波原発の災難に遭ひし皆様の健康祈る
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ガソリンもなき避難所は寒からむ一日も早き復興祈る
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例年より寒波激しく綿入れの工場休まず夜業続くる
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寒波過ぎ春うららの日長びきて湿り気の服ベランダに干す
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我が孫は破れしジーンズ誇らかに我は埋めたし敗れたる穴
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一握りの子らが貰ひし握り飯家族分けあふ戦時の苦しさ
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戦乱の暮らし孫等に聞かすれば「日の丸弁当食べて見たい」と
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終戦の喜び束の間民国に変はり殺人白色恐怖
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名を呼べど永遠に答へぬ我が叔父は高千穂丸で魚雷に逝きし
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我が叔父と肩を擦れあふ銀ぶらよ永遠に帰らぬ我が叔父恋し
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憂鬱なこの日頃 荘進源
流刑にも似たる受難の台湾人自由と民主求めて直走
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台湾のストックホルム症候群目を覚ませよと只管祈る
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台湾は試行錯誤を繰り返し植民地より民主国へと
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嘘吐きでのつぺり顔の総統を選びし人よ地獄に嵌る
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M九の地震津波は原発の放射線漏れを引き起したり
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原発の放射線漏れを阻止せんと決死の覚悟五十の勇士
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未曾有なる原発事故に立ち向かふ五十の勇士に神の加護あれ
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大津波と原発事故に見舞はれし大和の国よ早き復興を
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大金を払ひて付けし「大金」は我家の気候をつつがなく守る
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十代に丸暗記せし名文は漢文調の教育勅語
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夜更けて書斎にて聞く渓谷のせせらぎのリズム吾を酔はしむ
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老いの兆し何時しか我が身に忍び寄り遂に耳遠き日日となりたり
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六根清浄 田上雅春
新高の山ゆり昇る天つ日に新たなる世の幕開け覚ゆ
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春霞その源を尋ぬれば支那ゆり飛来る黄砂なりけり
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麗らなる春とし思へど霞立つ元が支那ではうたてかりけり
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春雨の降りみ降らずみ暮泥む里の黄昏狭霧に煙る
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類なき大地震揺るも天地の戒めなりと省みざれば
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辛卯の荒れ荒れたりし水無杯の須恵の蓋火に揺るる怪しさ
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蓋火かも此処の火なるか不知火の筑紫の日向立花の小戸
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嘗て無きこの国難を如何にして乗越え行かむ秋津洲人
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六の根を胸とは云はむ陸奥の根の禍清浄(わざわひきよ)めて復興(おこ)す福島
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一二三こそ万物(すべてのもの)の元(はじめ)なれ足すも掛くるも成るは六なり
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言霊の幸さながらに数霊の奇微(くしび)に玄妙(たへ)なる道理(ことはり)を知る
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数霊の道理知らば来るべき世も易々と乗越え行けむ
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こころはひとつ 舘量子
「我が友よ日本は必ず立ち上がる」心はひとつと元日本人
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台湾の祈り想いよ海渡り被災地の不安力に変えて
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一点を見つめ手の杖持ち直し「日本信ず」と目を潤ませて
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「日本は故郷以上」と下を向き眉間にしわを寄せる横顔
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今はただ祈りの力を信じます日本人に爺に笑顔を
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大丈夫話さなくてもわかるよと目を只見つめるICUに
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爺ちゃんの方に手を添え耳元で話し続ける今週のこと
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日本より押し花届く靖国の同期が来たよと爺励まして
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国籍も年代も越え月ごとに絆深まる台湾歌壇
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台湾の明るい未来がはっきりと見える希望の新高山百合
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温かい拍手が会場つつみ込む心は一つ台湾歌壇
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歌会で会えない寂しさ募ります只ただ祈るご病気快復
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色即是空 陳皆竹
十日後に燃えつくるとは露知らず市長選には投票と言ひし
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何時ものの入退院と高くくりよもや此度は永久に行くとは
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泣かないで写真の中に居りません彼岸で妻は待ってをります
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現世は「色即是空」や亡き妻は一握りの粉骨壺の中
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再びは犬を飼ふまじ人語をば解せし老犬遂に去りたり
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百元で十一足の支那ソックス工場の女工の生活を思ふ
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老友の霊柩車は今滑り出す斯くて我らは終焉さようなら
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計らずも四十年前の観客より性能褒めらるエンジニヤ冥利
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新旧の一週間分の下着類孤独に廻る洗濯機の中
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大戦にて殖民地みな独立せり負けたる日本聖戦と叫べる
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古釘を拾ひて売りし昭和の日蜜豆一杯五銭玉飛ぶ
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老妻のへそくりで買ひし按摩椅子家中の老弱恩恵を受く
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学会に参加した想ひ出 陳珠璋
東京の団体治療学会に秋空晴れて豊かな心地
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北欧の人情厚きオランダで学識満たし友情かたむ
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台北の冬と異なりメルボルンの暖かき春気分朗らか
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カナダにて台湾代表理事になり光栄保つ二十年間
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地主役台北負ひし第三回地域会議の責任果たせり
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遥かなるブェノスアイレス訪れて論文発表好評を受く
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君逝きて金婚旅行の夢消えし涙ににじむロンドンの旅
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なつかしき言葉通ずる日本へ君と誓ひし旅我独り
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地中海眺めうるはしエルサレムユダヤ人との交はり深し
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欧州に近き中東イスタンブール田舎の景色をめでつつ歩む
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大学の慈友(とも)と四十年振りに会ふなつかしきかなブラジルの旅
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名残り惜し杖をたよりにローマ行心臓疲れ二度と行けぬ旅
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