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15集2

あゝ 台湾                                     呉炎根

台湾はホストクラブか総統をえらぶのにあなマスクでえらぶ

心ここにあらざる者は早く去れ我等の台湾は我等で守る

伯父上をころされなほも下手人の手先となりし汝をさげずむ

まやかしの英雄の末路あはれなり化けの皮はがれ疫病神がに

かけ声のみ足なみそろはぬ改革は子供だましの夢物語

あな悲し赤十字をば黒にそむ(な)の良心は何処にありや

ひとびとの義援金にまで汚職ある事実発かる悲しや台湾

民主の名と形式かりる独裁の島となりたるあゝわが台湾

正義感も使命感もなき政治ゴロのはばきかす島あゝ台湾は

アラさがし罪のなすりあい智慧も骨もなき野党なりあゝ台湾よ

汚職とふは常識なりとうそぶける役人の島哀れあゝ台湾

総統の無能ぶりをば憤るもなすすべのなき民あゝ台湾

 

 

 

夾竹桃のピンク賑はし                    呉順江

ひそやかに息ひきとりし祖母上の慈悲にみちたる顔の恋しき

線香の煙の中の母の目が老いゆくわれを憐み見居る

童の日母に抱かれて聞きし歌「六氏先生」の調べ懐かし

父上の厳しき教へありてこそ正しき道を歩み得たりき

妻病めば家事に追はれて知らさるる妻のせはしさわれの足りなさ

久びさに妻と夕餉のひとときを二匹の守宮ちちと鳴きゐる

農医商と学を積みたるアメリカの吾娘あっぱれと喝采おくる

夜遅く家路に帰る子の車テール・ライトの闇に消え行く

去年の秋弟くれし李白集形見となりてさびしくめくる

ちちははは癌に倒れてはらからもそれを病ひぬやがてわれもか

子と孫の帰りし後の夕食は心うつろに箸を動かす

久びさの一家の集ひに裏庭の夾竹桃のピンク賑はし

 

 

 

台湾の平安を祈る                                 呉戀雲

日本の津波のニュースに胸つまる我らの平安を神に感謝す

被災地に何かをすべきと歌友は寄附して友の無事をば祈る

大地ゆれ津波の難にみまはれど秩序乱れぬ日本の友ぞ

未曾有なる大災難に日本の友皆助け合ひ誇りの高き

大地震津波の襲ふ報道の災地の人に幸あれかしと

子供等に道徳を教へ教育の改革一途に国を守らん

建国の百年を祝ふ花祭り吾が台湾に幸多かれと

年毎に歩みのにぶくなりゆくも短歌の集ひに楽しく急ぐ

事もなく過せる日には短歌を詠み声高らかに民謡唄ふ

学生も毒品を飲む報道に教育を憂ひ溜息絶えず

先人の築きし百年台湾は世界に誇る民主の国なり

藍緑も皆団結し民主たる島の平和を祈りてゆかむ

 

 

 

未曾有の大災難                                   江槐邨

一瞬に修羅の巷と化す和平郷避難の群に津波押し寄す

収容所に配る食品水と毛布秩序整然と争ふ人なく

避難所に配る毛布はただ一枚凍える身如何にせん外は雪

津波から逃れて衣食と医薬缺く収容所に逝く老いの儚さ

災難より三週当て所なく漂ふ大海に助けらる犬のいぢらし

雪山を越えて汚染なき新天地水清く吹く風すがすがし

混雑の地下鉄に迷ふ野蜂一匹手に取り出口の園に解き放す

どうやらと歌を作れる喜びに電子辞典は吾の欠かせぬ師匠

幾年を四月の歌会に歌友と愛でし白百合気候の異変に叶はじ

原發の汚染に海魚を敬遠し養殖の魚にテーブル賑はす

爽やかな暁河原をさ迷へば明けの明星吾に微笑む

朝ぼらけ緋桜の咲く山荘に妻と愛で居る幸せの時

 

 

 

あの頃                                           高淑慎

糊つけのセーラー服に襞スカート ランドセル靴は従姉とお揃ひ

家で着る簡単服もお揃ひのあの頃家は大家族なりき

連載の「心の王冠」待ちかねて少女倶楽部をジャンケンにて読みき

公園の原っぱにて見し活動写真風に銀幕の布が揺らめく

沖合ひの軍艦が照らすサーチライト夜空に一瞬交差し又消ゆ

海軍の軍楽隊の演奏の世界名曲うっとりと聴く

圧巻の軍艦マーチの勇しく公会堂広場拍手の絶えず

「海軍の七ツボタンはステキね」と従姉と手つなぎ帰る夏の夜

劇場で兵士慰問に従姉の舞踊「鴛鴦道中」はアンコール絶えず

小六の小柄な従姉の踊りたる女房役は「ほんとに可愛いかった」

あの頃の馬公を語り合ふ従姉も逝きひとり厨に往事懐かしむ

「あつ・どうしよう夕餉整へ座につきて蓋を開くればご飯は生米」

 

 

 

床の間に                                        高寶雪

年々に感動にぶくなりゆくを西の空みて夜の灯ともす

新築のビルの廊下を颯爽と歩む若人(ひと)らを吾は羨しむ

点滴のナースに上下注射され腕は紫の痣ふえてゆく

かろやかに雀のさへずり聞こえ来る雨の上がりし束の間の空

約束の駅に急がむ高鉄へ髪にまつはるスプレーの匂ひ

宗教とかかはりのなき教会のひと日のピクニック楽しかりけり

うたた寝の浅き眠りの雨音は五七五七のうたのリズムや

床の間に禅語一行掛けおきて日日の行ひ省みる吾

八十歳の生れ日迎へ吾が一生の舞台を巡り悲喜交々と

八十とふ歳まで生きて言ふことを思ひつくごと折折に語る

三周忌夫我のこし立ち逝けり夢より覚めて泪あふるる

亡き夫と共に歩み来し五十二春墓石の傍に詠みて刻みおき

 

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