15集1

余念なかりき                                 石瀬俊明

国難を救ひし昭和の大君の天長節に生れ出し孫

伝ひ歩き部屋の隅にて何やらむいたずら事に余念なかりき

離乳食ママのスプーンを払い除け手づかみ食べむと落花狼藉

酸っぱさに満面顔を顰めつつ好物の苺食し終へたり

なにげなく吾が様子をば探り居てやがて慣れしか抱かれて笑ふ

改めて小さきものと思ひけり吾を送らむと這ひ出でし孫

大津波にさらはれし人等思ひやれば安寝もならずとやつれし老翁

そのかみにかかわりもありし福島の原発はいま修羅場となり居り

宿取りし落ち着きありし浪江町放射能にて人影なからむ

経営陣に生色もなき東電に再興の壮士等必ず出で来む

濠端に春の光の漂ひて高き土手の上門構へのあり

江戸城の西の木戸なる半蔵門木立を背にしてつつましく見ゆ

 

 

 

友を選ばば                                     欧陽開代

暖かき南の島の台湾も寒流来れば北国に化け         

事有れば子等も友等も集ひくれ冷たき世風吹き飛ばしたり

亡き友を偲びつつ今新たなる友求めをり賀状の減れば

後添ひに祖父の世話への謝意述ぶる孫も大学大人になりぬ

寒き風雨そぼ降るに遠き子等思へば寺の鐘の音はるか

外つ国の子等につながるスカイビー微笑絶えず元旦楽し

春風に小鳥囀り香る園色とりどりに夕日輝く

蓬莱の大久保利通蔡英文総統選に花開く春を

大災害に遭ふも乱れぬ大和人しつけ芳し四方靡かしむ

疏ましきどぶ鼠たる原発を何故に台湾推し進めをる

天災は避くる術なき神の業核の災ひ招くは愚か

子を愛でば受くるより遣る事励め友を選ばば意気合ふ武夫

 

 

 

東日本大震災によせて                          河盛尚哉

いくたびもこぼるる涙で読み返す台湾歌壇の先輩(ともがら)の歌

日本を祖国のやうに案じては詠じてくださるご愛に感謝

どのやうな天変地異が襲ふとも決して切れぬ日台の絆

大自然の猛威に負けず起ち上がる大和魂いまここにあり

迫りくる津浪恐れず盾となり民ら救ひし警官(ひと)よ尊し

命賭け避難を告げし乙女(ひと)の声ああ哀れにも濁流に消ゆ

今もなほ行方の知れぬ人々の御霊よ天にて安らかにあれ

わが神よ試練に遭ひし日の本をその御手をもて導き給へ

被災地の惨状いまも変わらねど今年も桜は春を告げゆく

危機的な原発事故の前線で闘ふ勇士の頼もしきかな

政治には何の力も無けれども全土に広まる友愛の輪の

日の本もフォルモサともにいつまでも天の祝福豊かにぞあれ!

 

 

 

深き思ひ出                                    顔雲鴻

引き出しに溜りし写真を出したれば何れにも同じ深き思ひ出

何となく寂しきに歌を書きゐればいつしか我の生き生きとせり

前に詠みし歌読みゐればかの時のわびしき夢に戻りし心地

幼な孫とボクシングの真似八十爺のわれが敷布に転びてばかり

嫁に代り炊事場に立つ老妻は小言もなしに不平も無しに

三才の孫に柔道は何段と問はれてすかさず「八段」と言へり

休まずに働く吾子を痛むれど親心ならば子は旅させよと言ふ

逝きにける友の姿が目に浮ぶ二度と逢へぬが只悲しかり

曇天も雲の上には太陽の輝きをると心安ます

冬の風未だ寒けれど窓外は檳榔の葉揺れて春を呼びをり

道の辺の春聯売りの並べたる棚に我が知る加齢一年

久々に訪ひしに君はすでに逝き旧情を語らふ術ははやなし

 

 

 

生命                                        北嶋和子

国難に為すべき事を問ひつつも胸に満ちくる祖国への愛

原発の避難地域の牛想ひ移住ためらふ飼ひ主哀し

三陸のワカメ戻しつ胸痛し復活誓ふ友を思ひて

難抱ふる日本に骨を埋めむとふ勇断下すキーン氏熱し

被災地にあれど満開の花の宴久々に戻る人々の笑み

震災に失はれたる人の魂護り給へと天使に祈る

整然と嘉南平野を区切る田の緑豊かに民を潤ほす

日台の誇りや高砂義勇兵烏来の緑功労讃ふ

心地よげに鳥たちの鳴く朝まだき靴磨く手の軽々として

餌求め水面に口を突き出せる小さき金魚の生命尊ぶ

気がつけば「よいしょ」の言葉に力得て我が身動かす歳とはなりぬ

ゆるやかに流るる人の波別けて何ゆゑ我のかくも急きたる

 

 

 

魔の大津波                                      胡月嬌

牙剥きて貪婪に呑み攫ひゆく魔の大津波嗜虐つくして

一夜明け陽差しに惨状より酷し潰滅とふをその儘露呈

災報の廣域、多様とふ悲惨災害に死者ただにふえゆく

行き過ぎの文明発展人類よ今こそ省みよ自然の報復

人類の総決算を流し込み海の怒りを今こそ知るや

この国難酷くあれども日本よ忍耐練達希望とふへ往け

年々の豪雪耐へて来し民よ桜も咲きて励ましゐるぞ

あきらめず挫けないとふ子供らよ神様ちゃんと聞いてくれゐるよ

8年後の自分への手紙カプセルによき国よき親よき子供達

日本人筋金入りの国民性悪魔も顔負け復興早からむ

人間味溢るるサルコジ大統領東京に飛びロボット提供

どさくさにつけ込む犯罪矢張りあり悪辣極むに公憤覚ゆ

 

Comments