バックナンバー‎ > ‎14集1‎ > ‎

14集11

台湾ノスタルジア                                 劉玉嬌

初まみえの片倉フォトに目を見張る凛として走る台湾の高鉄

「なーるほど・ザ台湾」はた「協会報」に台湾の秘話語りてはずむ

歌壇誌の表紙絵のフォトいと美しきなほ台湾に生きてゐる日本

シンポジウム引き上げの人ら喜ばす古き良き日のスライドの回顧

紀伊国屋平積みに著書見つけたり南島「台湾鉄道と日本」

佳史氏台湾に残る遺構探すガイドブックは廿余冊成る

一連の「木造駅舎の旅」に見入るなぜか知らねど唯になつかしく

「レアアース」と聞かぬ名称によみ返す稀土とやら言ひつけ上がる国

したたかと彼の国を評する町の声度し難き国海峡おびやかす

波高き台湾の課題は重たかりどこ吹く風とでたらめ花博

唖然とす芋の葉一株数百円天文数字の追加また追加

台湾語八音の抑揚むづかしく台湾を愛するもの立ち往生

 

 

 

尚も恋しき                                       劉心心

母娘とはかくも絆のつよきもの八十路に入れど尚も恋しき

末孫も運転免許持てるとふわが子も歳を取りにけるかな

異人等のフォルモサと声上げしわが台湾よ永久に幸あれ

秋立つと暦にあれど残暑とふ夏居座りてせんかたのなし

秋立つと暦にあれば草花の息つくけはひ見ゆる気ぞする

ベランダに踏み入る足を止めたり一羽のペタコ遊び居たれば

蓋棺はこの世の生の総決算弔問客のこの名あの顔

子等戻り又去りにけり団欒は浜打つ波や寄せてすぐ退く

「馬」選りし台湾人は愚かだと責むるよりそを糺して欲しき

実兄の訃報に接しわが夫の哀しみの顔胸に焼きつく

嵐去り美しき夏始まれど土石の中の人は返らず

ニューファッション何時の日にかと惜しみ来て袖も通さず夏の過ぎけり

 

 

 

快く短歌を詠んで                                 劉傳恵

日々仰ぐ恩師の遺墨色褪すれど敬慕の念は何時何時までも

年重ね介護されゐる老友の車椅子看て俺も何時かは

仰ぎ見る夜空静けししみじみと雲間にぴんと光きらめく

年老いて気温の変化敵はずに急診求むる友のありたり

朝明けに広場に集ふ人の群月々増えてゆく身体鍛ふると

清兄よ何も言はずに急ぎ逝く子孫ら置きて今は何処に

朝あけに山路歩けば先駆けに美しく咲く梅花の看ゆる

ぢいーぢいーの鳴き声尽きて「地面」に転ぶ蝉のむくろを蟻運び行く

水害に寸断されたる橋と道登山の群にスピード駆けて

電話にて水害如何と睦まじき友誼の声の異国ゆ来たる

特豪雨(おおあめ)に一夜で屋根の欠壊し寝間を取られ床の間に忍ぶ

暖かき冬日に稔る桑の実を啄ばみに来る鳥休みなく

 

 

 

さらばビクトリア                                 林聿修

台湾に等しき土地に五十万人のビクトリアにして鉄格子要らず

人一人ひそみ居るかの箱型の木の叢不気味暮れの散歩道

美しき島春を極むる花花に別れを告ぐる卯月十三日

再たの日は知らず深深と目に胸に刻む空と海らんまんの花

過ぎゆきて束の間に似るひと月に名残の尽きずさらばビクトリア

素晴らしき出会ひをとふ娘のささやきを背に夜深き帰国のゲートへ

をりをりの感動のメモ短歌に組むパズルゲームに似たるときめき

纏足の幻見るや指先に載る靴を履くぺットの犬は

ささくるる胸何時しかに癒されをり香り床しき木犀の辺に

八十の身にもはや無縁を思ひつつ立ち去り難きニュールックの店

ゆきずりに呼び掛けられて戸惑へり四十年を経る同僚との出会ひ

壁に貼りて干す牛糞を燃料とす原始に生くる崑明の民

 

 

 

永らへゆかむ                                     林月雲

しがらみは前世の縁でつながりてなべては運の花と香りぬ

年ゆけば多感ドン感わかち行き浮世ドラマの苦笑劇場

豊かなる体験重ね思慮深くにらみをきかすかしこきも居て

封建の地獄ぬけ出し良き友と知識を交はす虹ライフかな

思春期の彼の大戦を浮べつつ死の関門を指折りてゆく

台湾はコリヤに比べはるかにも親日多しは不思議なものよ

東洋に敬老美徳残り居て老い福ゆだね命の洗濯

心して粗大ゴミにぞ成るなかれワンマン王者さらさらいけず

大国のハザマにブラリ息づきぬ台湾の民悲しからずや

熱血の歌会島に輝きて老のプライド多彩をきはめ

退化有りされど呆けにはあらずなりテレビ文化の洗礼あれば

良し悪しはなべてぞ神のおぼしめし吾が身いたはり永らへゆかむ

 

 

 

同じ空の下                                       林燧生

幼き日月見の夕べ母の背ではしやぎ見し空幸せに満ち

疎開地で戦き眺めし台南の硝煙の空阿鼻地獄かも

汗滲む動員作業空睨み酷暑に堪えし学徒いとしも

故郷を離れ異郷にて学びし日南の空にホームシック癒す

鳳山の空の下にて誤魔化しの反攻大陸軍訓一年

青空も恐怖に満ちぬ戒厳に島人喘ぐ白色のテロ

職場での挫折と差別に堪え忍び空に誓ひし「台湾意識」

侭ならぬ単身赴任空仰ぎ己諫めし二十四年

空の下八十路を越えて父母に尽くせざりし事ひたすら悔ゆる

大空に漂ふ雲に託したるあまた成らざりし我が心願を

夕焼けの空に陽落ちて東に月は出で来る大自然の美

藍碧の果し無き空微動せず世の流れをば見詰めてをりぬ

 

Comments