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13集4

さくら、さくら                     黄教子

ふるさとの国のさくらを見たしとふ思ひつのりて帰り来たりぬ

「いつにても帰っておいで」と兄のメール父母亡き後も帰る場所あり

はるばると来つるものかは東御園天城さくらの香の下に佇つ

咲き盛る天城さくらをただ見上ぐ花の香りに身は包まれて

千鳥が淵染むる桜の花霞時空を超えて探しゆく影

花の下眠るがごとく死ぬもよしさくらさくらの花の海ゆく

靖国のさくらは御霊の集ひとも思へて青き空を見上げぬ

靖国の御霊の夢を見ると言ひし鄭春河氏の偲ばるるかな

清浄の自刃現場の(いしぶみ)にかなしきいのちの積み重ね見つ

父君を語りさくらの下に佇つ半世紀経しわれらの絆

ひととびに四十数年スリップし吟詩部の友ら集ひくれたり

ちちははの奥津城に散るさくら花ともに見し日の幻とともに

 

 

太陽西より昇る                     黄培根

ECFAは何事や老いも若者も誰もが知らず神様が知る

馬政府二年になるも悪政で四面楚歌にて民心得られず

国名なく国際地位もなきこの島未だに彷徨う亜細亜の孤児よ

生活の不安絶えざる乱れ世に奇しくも太陽西より昇る

日々募る馬政権のよろめきに台湾維新の舞台迫り来

終戦時生まれし子らは何時の間に老人チームの会員となりぬ

昨日の敵今日の友なるも明日は又他人功利の社会険しき

五人の子育てし老妻の丸き背と増えゆく皺も功の輝き

横綱なき大和力士よまたも負け伝統の国技斜陽の証し

今日なくば無論明日もなきこの浮世無欲に健康快適の日々

この島に生を享けしにそを認めぬ族群ありて悲憤の極み

物豊か緑溢るる常夏のいとしわが母その名タイワン

 

 

生を楽しむ                       蔡永興

幾重にも連なる雲の綿雲の真白に我の憂ひ消えゆく

朝日影さして窓辺に花開き小鳥さへずる生を楽しむ

過ぎし日の端午に母の作りたるチマキの味と香は二つなし

程もなく民主も消えむマの手にて台湾人よまだ気付かぬか

芋っ子は井ならぬ鍋のかはづなり早く飛び出よさらずば死なむ

手をとりて歩む姿の睦まじく友等の愛は千代に八千代に

売られても団結出来ぬ台湾の悲哀いつまで天よ導け

人の手に頼らず暮す幸せは神の恵みと感謝ひとしほ

失ひし子をいかばかり思ふらむ妻耐へゆくは神のご加護か

我が母に尽くし足りぬと悔い消えずこの期となりて何をなすべき

鳥鳴きて窓辺花咲く部屋のうちクラシックの音満ちて楽園

ポッツリと姿を見せておはやうと皆に挨拶観音の山

 

 

古都四百年                       蔡紅玉

紅の鳳凰花咲く古都の夏吾が里京都に似たりと言はる

オランダの安平占拠ゼーランジャ城は四百年の歴史を語る

鄭成功手植えの梅が花つけり延平郡祠に故事の纏る

明の復起謀りて渡台の寧靖王関帝廟裏に故居の跡残す

主を追ひし五妃の殉死の痛ましく合祠の廟に涙さそはる

明に勝ちし清は安平の億載に砲台据えて城砦築く

市内まで延びゐる運河にさざ波が夕陽にキラキラ輝きてゐる

儼然とゴシック建築の州庁は町に懐かしき日本の遺産

雨降らぬ南部の冬は暖かく柑橘青菜市場に溢る

四草橋越ゆれば湿地の国家公園渡り鳥鷺の自然保護区なり

百年の伝統の味覚軽食の魅力に人等古里恋ふる

馴れにたる町のすみずみ古里の温さは母の愛にも似たる

 

 

外つ国の歌に                      蔡焜燦

幼な日に友と歌ひし「こひのぼり」時は流れて外つ国の歌に

年かさね友の涙のもろきかな悲しき報せ咽び伝ふる

蓬莱のわが同胞(はらから)国民よ自力で戦へ子孫のために

庚寅の年の初めに念ずるは子等よひるむな悪の国支那に

蓬莱は麗しの島と言はるれど石投げ込まれ馬狂ひ騒ぐ

年男今年の計を定めたり祖国(おや)に贈るは馬を咬むこと

久方にさへずる小鳥の声を聞き国護る心新たに萌え出づ

美しき太平洋に添ひ並ぶ日南街道訪ひしわが友

九州に茶所ありと友の言ふ嬉野 八女茶 知覧 都城

フェニックス並ぶ日の本宮崎の海は麗し山も麗し

さつき晴れ久方ぶりに「初夏の歌」口ずさみつつふるさと憶ふ

蓬莱は春秋分かたぬ島なりやさくらに尾花百花繚乱

 

 

 

我が家の末っ子ヘンリ                  蔡佩香

靴箱に入りて我が家に来し子犬ヘンリは友のプレゼントなる

ミルク飲み好く育ちたるヘンリ常に籠より逃げ出しやたらと小便

床の掃除へンリを風呂に公園へ散歩運動と吾は暇なし

中型犬に育ちしヘンリ立て坐れ伏せ握手左右を間違がはず

帰宅せし家人各自のスリッパを違はず選び銜はへ来るなり

「公園へ散歩に行くよ」と言へばすぐベルト鎖を銜はへて尾を振る

ヘンリ連れ散歩に出れば人びとは「綺麗な犬だ」とほめくるるなり

ハモニカを娘が吹けば首伸ばしウウーと声出し歌唄ふなり

ペット美容の店へ行く時ヘンリ何時もタクシーに乗りて行きたがるなる

足の手術受け帰宅せし吾をヘンリ家の五階より駈け降り迎ふ

ギプス嵌めし吾を訝りて労はるがにぐるぐる廻り吾が足舐める

家族らの愛を一身に幸せに逝きしヘンリにこの歌記す

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