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13集12

世界にはためく                       林蘇綿

真っ白のブラシ花咲くカユプテ路消えゆく夜露に精気を放つ

台湾の山の宿り木胡蝶蘭名花となりて世界にはためく

セメントの垣壁登るカタツムリ「角出せ槍出せ頭出せ」

寒き朝乳母車にペット乗せぬける青空の四馬路を渡る

江の島の橋の袂に振り仰ぐ夕焼雲に燃ゆる富士山

江の島の斜面に匂ふ紫陽花は古来種に似たうすブルーかな

キラキラと紅葉宿したる露の玉葉末の雫カメラに捉ふ

地の底につららの如く垂れ光る地蛍の幕獲物待ち居り

文天祥の忠孝石碑の赤崁楼鄭成功の偉勲讃ふる

黄昏の臨夏郊外の馬追を小籠に吊るし星のコンサート

黄河の劉家峡の姉妹峯石筍の如し四方の陽浴びて

シャボン玉の如き空飛ぶ熱気球着陸に広き刈田を借りる

土曜ごとの世代同堂の夕餉待つ曾孫と遊ぶ老いのひととき

 

 

 

生けるしるしに                        林肇基

ネイティブは非人(ひとでなし)(ほか)吧子(タイパーツ)豈老いし血の滾らざらむや

盲ひたる民よ目覚めよ我が島に老K在る限り日の目見るまじ

八十路行く堅き絆の歓びを友よ謳歌はん生けるしるしに

日の本に原爆落しフォルモサに暴君落とせし罪軽からず

君知るや親中一途に駈け行かばAITU USMのたちはだかるを                 (AITU米在台協会 USM米海兵隊)

党産が諸悪の根源と知りつつも取り巻き連は国よりも銭

踏まれても藤より粘る島人にやがて花咲く春の来るらむ

外つ国の入り立ち替る殖民にたくましく生くイリア・フォルモサ

中共の七光りもてみな如意と早合点の島は案の定頓馬

フォルモサの奇しき運命の幕引きを見届けずんばいかで目を瞑じむ

悪銭は身に着かずとはいにしへの戒めなれど老Kとくと着け

敷島の大和の国は母国にてあらまほしきは祖国台湾

 

 

 

アマリリス咲く頃                          林禎慧

吉報に涙ぐみつつ抱き合ふ国家試験の発表の午

将来はサッカー選手にと云ひし孫何時しか今は白衣の医師に

雑草にまつはれながらも赤々と古里の庭にアマリリス咲く

紅白のアマリリス美し五月雨の露のしたたる主無き庭

若々しき君のうつしゑ眺めつつ移りし歳月指折数ふ

夫の墓前ひざまづきつつ絶句する我が孫のパス告ぐるひととき

おじいちゃんの遺志を継ぐよと胸はりし長孫の幼時のおもかげ新た

オレンジカラーの花房まぶしき古里ののうぜんかつら我が春ことほぐ

清明節先祖祀りし碑の前にひざ折祈る我が家の平安

「ばあちゃんに」と北欧の旅ゆ持参せし手描きのコップを我が胸に抱く

日焼けして「テニスが生命」と云ふ孫のサボテン髪に我が夢托す

カポックの棉とぶ並木の故郷にうかららたづさへご先祖おとなふ

 

 

 

のぞみ                                林梅芳

華やかな桜の下に吟味する春はうららと咲き誇るかも

あちこちとさまよい歩く人の群笑みをたたへて顔は幸せ

春は過ぎ冬着の仕末丁寧に夏の到来心待ちに待つ

初夏のそよ吹く風に心地よくゆらぎゆらぎて人は微笑む

涼風の吹く園歩めば身は軽く早やばや帰へろ温きわが家へ

たっぷりと湯水を飲みて汗をかきほうと安らぐ運動の後

お料理は夏に合はせ淡々と好き食欲は身を強くする

家中の和気藹々たる雰囲気は明日の仕事の力とならむ

美しき椿の花は春の花長く咲けよと人達願ふ

春相撲力士の面はきびしくて初日に挑む決意を見せて

いと佳きを人乞ひ願ふ日頃より情緒たくわへ専念に磨く

寒き日の続けば夏よはよ来よと曇り空仰ぎわが願ふなり

 

 

 

素足の級友                            林碧宮

戦時下に素足のままの級友ありき心なつかし心せつなし

田舎道を素足の級友と甘蔗かみ下校したりし彼の日忘れず

吊り橋を素足の級友と渡りつつ腹這ひになりて笑ひこけたり

学びやで昼食時に唱へたる御製は今も胸を熱くする

故郷のうら庭にある臼と杵今もゆるぎなく昔を語る

雨につけ陽の照るにつけ被り来し母の古笠は後生大事に

父親の倹約偲び些かの無駄使ひもせず歩みて来たり

苦をいとわぬ母を偲べば些かも疎かならず家事のあれこれ

箪笥あけ未だ残りゐし亡き夫の一帳羅捨て難く仕舞ひこむ

愚直なる性を自から侮りてほそぼそと経し八十路の日まで

老いること哀しからずや運命に従ふ如く子にもしたがふ

哀しき事苦しき事は思ふまじ生きゆく晩年のいとほしければ

 

 

 

子                                      林百合

若き日に大志抱きて留学の途につきし子ははや六十二歳

学成りて医学博士になりし子に初老の影さす胡麻塩頭

初孫の誕生に胸ときめかす吾子は待望の祖父になりたり

留学の日より住みつきし外つ国はもはや子の故郷子は異国人

中秋が近づけば子を思ひ出すいかに届けむ月餅文旦

わが一世外つ国に住む孫子らと一家団欒の望み空しく

見栄えせぬ「キャベツ」を子らは美味しいと吾を励ます自家作農業

誘はれて子らと「ドライヴ」に行く朝は目ざめよろしく「目覚まし」いらぬ

晴れの日は万歩計腰に孫子らと瀬音すがしき谷川めぐる

幸せは勤めを終へし孫子らと一日を語る夕餉のまどゐ

恙無く生き永らへて孫子らと誕生祝ふ至福のひと時

若き日は仕事仕事でいとし子につくし足らざる悔いに責めらる

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