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13集11

花と草                            劉心心

花市に台湾アマー(台湾のお祖母さん)とふ蘭ありて台湾アマーの我に微笑む

晩秋のたそがれ雲の低く垂れ一人思ふは台湾の末

我が娘祖母になりたり新しき祖母の笑顔の美しきかな

寄り添ひつ諍ひもして六十年バラの花束今日を祝ひて

ゆっくりと花市の花愛で行けば身も軽やかに病忘るる

今日もまた友逝きにしと知らせありガンとふ敵にあらがひ敗れて

ガン病みてはや四とせの過ぎにけり逝きし友あり健在も有り

ガン末の母入院と友告げり明日の我が身は如何にあらむや

雑草の健気なるかな抜き取られ抜き捨てられて尚も生きゆく

年越しに街は賑はふも年寄りは安らけき日を願ふのみなり

春の陽に目立つ雑草の抜かれゆく来世は草になるなと祈る

春なれば新しき巣を造るらむ挿し木の小枝鳥に盗らるる

 

 

 

呆けを防止して健やかに                       劉傳恵

ぽんやりと常にテレビを看ていると年もとらずに庭木も凋む

散歩して気付いた事に直ぐメモし短歌でも詠めば呆け退ける

気晴らしにあちらこちらと旅行すれば呆けは遠のき健やかになる

嘆きごと人にも言わずくよくよと悩み過ぎると呆け易くなる

仲間より外れて一人孤独だと夢も希望も恐れて逃げる

好く食べて風邪も引かずに朝寝して根性なきゃ老け易くなる

年を取り頭禿げても若い気で脳を磨けば夕陽も映す

気に掛けてあれよこれよとせきすぎてストレスためると気が抜けて行く

気が弱く腰がまがって白髪でも色気保てば頬ぽかぽかと

手を使い楽器を奏で絵を画き日記を書けば憂ひ消えゆく

趣味を持ち若々しくと落ち着いて短歌を詠めば花咲き香る

身を修め手足動かし清らかに脳を鍛えて天寿をば待つ

 

 

 

銀色のたそがれ(ビクトリア)                  林聿修

アンデルセンの童話かずかず浮び来る板チョコに似る瓦葺く家

山を背に森あり瀧あり湖ありて百花奏づるガーデンの春

寂び寂びと赤き鳥居と橋を包む筧のひびき日本庭園に

百余とせ隔つ炭鉱そぞろ憶ふ盆を型どる二百坪の園

目覚ましかに朝告ぐる鳥かそけき音に日々を違はず五時四十五分

西空に在はす神神の後光射すや夕日も雲も白金の色

台湾の夕やけ懐ひて佇む身をきらきらと包む銀のたそがれ

降りそそぐ銀の光りに染められてビクトリアの夕白夜さながら

華麗なる過去を秘めつつ旧総督官邸太平洋背に入江見下ろす

潮の香のむた官邸の広場よぎる風緑頭鴨とたはむれにつつ

ろう長けし夫人の裳揺らせし日もあらむか香散らして風は

オフィスとなれる官邸のグレイの壁赤々と埋め爛漫のバラ

 

 

 

一場の夢                        林月雲

終戦後インフレーにて一頃は一家心中絶ゆることなし

刻立ちて安定すれば悪政の黒銭みだるにぎやかさかな

名にし負ふ島のリーダ荷なふ人へそくり過ぎて世人驚かす

かけ声がのし上がるれば銭の山黄金に弱きしくじりボスよ

コツコツとかせぐ成金多かるに国の札束つまみ食ひして

去りゆきぬ春をなごむや渡り鳥曇る彼方へ鳴きつつ消えゆく

まなとちてふとも浮びぬ遠き日のほのかかすかな胸ぬちの虹

乙女子のとほる街かど見送りぬ深かきまなざし何時しか気づく

紅顔の美少年には見えたれど胸を患ふ悲しき運命

何時しかに見受けざる人神様がへだつる世へといざなふときく

良き薬なかりし頃の情なさよひと風吹けばつぼみも散りて

人生は何ぞやときく者ありぬ何んと答へむ一場の夢

 

 

 

台湾の運命                             林燧生

「イラフォルモサ」ポルトガル人の感嘆に奇しき運命の幕開きとなり

オランダに続くスペイン海峡の波高けれど先祖蜂起す

反清の旗揚げ鄭氏侭ならぬ二十二年の東寧の夢

清朝の手緩き統治に見放さる二百十二年化外の地と民

図らずも甲午の役で日本に割譲さるる落胆と悲憤

アメとムチ近代化への途なれど侮蔑に喘ぐ殖民地の民

日本の敗戦により中国に接収されて閑古鳥鳴く

二二八で虐殺されし同胞は二万八千の怨霊になりぬ

たて続く白色テロは島人の心の葛藤と矛盾の火元

政権の初交代に沸き立てど陳総統は民を裏切りぬ

人を喰い砂噛む嘘の馬政府は麗しき島を伏魔殿にす

台湾の行く手遮る雲のあり空を仰ぎて涙こらへぬ

 

 

 

二重のよろこび                         林素梅

アメリカの子孫かへりてバースデー米寿曾孫二重のよろこび

曾孫の我に抱きつき頬寄せる甘きポーズをパチリとカメラに

育てたる子等孫曾孫かへり来て米寿の宴に我喜び満つ

老いの我米寿を迎ひ、あなうれし我子等共に神に感謝す

子等独立、孫も生まれてうれひなし、老後は和歌とカラオケを楽しむ

若き日の強き意志にて幼稚園を営みてはや四十週年

人変われど心は同じ園愛す前途を祝すいや榮祈る

ありし日に心血築きし幼稚園四十週年祝ふ感慨無量

失き夫の今日誕生日ケーキ供ふ家族つどひて冥福祈る

失き夫も何時しか五年君しのぶ夫婦の苦楽六十三年

ライオンズの万国服のショーすばらし化粧踊りも新奇珍らし

クラス会二ヶ月ぶりに友集ひ若き日かたり友のニュースも

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