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15集-作品評6

黄教子選 その2

師走の夜一年を回顧感無量堂々立てる国旗を悲しむ           詹石藏

 「回憶」と題する十二首は、睦月から師走までの一年を詠ったもので、師走となると一年を回顧して感無量の思いに浸ります。ただ作者は下の句で「堂々立てる国旗を悲しむ」と詠んでいます。堂々と立っている国旗を誇らしい力強い気持ちで見上げているのではないのです。この年代の台湾人ならすぐ分かることですが、日本の人にはわかりにくいかもしれません。ところがこの二、三年はこの国旗さえお隣の国からの来賓の前では堂々と立てられなくなってしまったのです。本当に嘆かわしい感無量です。

 

何一つ持たず青空を渡り来る鳥の身軽さうらやましきかな        曾昭烈

 人間の生活は様々な責任やしがらみに取り囲まれて、重い荷を背負いながら送る毎日です。時には何もかも放下したいような気持ちにもなります。見上げた青空に飛んで来る鳥の姿が見え、その身ひとつで行動していることの自在さを羨ましく感じている作者。きっと社会や家庭で重要な地位にあって、その責任も重いのでしょう。青空を見上げて思索できる作者にはまだまだ心のゆとりがありますね。

 

十六夜の月光の下我が歌を胸熱く読む人は優しも            蘇楠榮

 蘇楠榮さんが上梓なさった歌集「南島に息吹く」は、多くの反響がありました。この歌集を増刷して各地に送られた奇特な方々もいらっしゃいました。

 

ハリウッドとディズニーランドで若返りハネムーン気分で金婚日待つ   蘇友銘

金婚を迎えるお二人が、ハワイからアメリカ本土の北から南までを旅行して益々若返っておられるとは、この上ない嬉しいことだと思います。結婚五十年、様々な事を乗り越えて、今も揃って元気で旅を楽しめるのですから、こんな幸せはないでしょう。アメリカでの生活も慣れたもので気楽にバスを乗りこなせるご様子。お元気で行動力のある作者が、歌壇の一員であるとは頼もしいです。

 

中国製断じて買はじシャツを取りひねくり返すも怪しきは買はず   曹永一

 こんな一徹な御仁が台湾にはおられます。ところが製造国を明示しない商品も多くて迷いますが、明示していない怪しいものも買わないのだと作者は断言します。悪貨は良貨を駆逐すると言いますが、景気が悪いと誰しも安いものに手が伸びます。不要の物に取り囲まれている生活を反省する時かも知れません。

 

扇風機もなかりし昔の我が暮らし眠れぬ子等に団扇離れず        荘淑貞

 台湾の長い暑い夏、今はクーラーを点ければ涼しい室内生活ですが、クーラーは勿論、扇風機さえ手に入りにくかった時代もありました。お母さんは子供達が少しでも快適に眠れるようにと、団扇で扇いであげながら、昼間の家事に疲れてついうとうとと、子供もそんなお母さんを起こさないように眠ったふりをしていたかも知れません。遠い懐かしい思い出。扇風機もクーラーもなくても幸せな子供たちでした。

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