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15集-作品評4

徐奇芬選  その4

行く川の流れに瞬時を同じくし時空を旅ゆく歌の仲間は         黄教子

私達にとって全心全力を尽くして苦労いとわずに歌壇を守護しているのは教子さんです。御自身の御仕事の外、家事も切り盛りして居られる忙しさにもかかわらず歌会の事になると何もかも措いて歌壇の為に尽くしているお姿はただただ感謝です。時は川の流れのように止まる事なくもその中の短い時間を一緒に過す歌会の私たちを「時空を旅ゆく」と表現されているのはさすが教子さんです。

 

八十路過ぎ無憂無慮に小酌にて日々万歩歩み幽明断り          黄培根

この一首を読んでいると明朗なお爺ちゃんが目の前にちらつきます。八十歳過ぎても健康で何の憂いもなく日中は万歩歩いて体力をつけ、夜は軽くお酒を嗜んで家族と何かを語り乍ら一時を過す幸せな老境はこれ以上あるでしょうか。こんな明朗な人に悪魔はついて来ません。ユーモラスに長寿術を皆に教えている一首。御参考にしてください。

 

たそがれに白き帆影の行く見えて友と美酒飲む船の窓辺に        蔡永興

アイルランドを旅行した時、白い帆影の見える船の窓辺で友と美酒を飲み乍ら目を楽しませ心は幸せで一ぱいだった心境が描写されています。健康で世界各国を遊歴できる幸せを大事に、老後に楽しい思い出を多く残すようにと祈っています。

 

年経ても嘗て愛せし日本には郷愁にも似る感傷よぐる          蔡紅玉

私達の年齢層は殆どが昭和初期に生まれた人が多く、日本人として戸籍をとり、教育を受けた人が殆どで、今でも日本を本当の故里の様な気がしている人は少なくないと思います。「嘗て愛せし」と詠まれていますが、今でも日本に郷愁を覚える老人達は少なくないと思います。外国にはなったけれども日本を慕う人は多くあって、この度の大災難に台湾もわが事のように力の限りを尽くしました。一日も早く日本が復興する様お祈りするばかりです。

 

我が戦友(とも)(なれ)との(えにし)六十五年(むそいとせ)何ど旅立ちぬ吾に告げずに        蔡焜燦

六十五年をテーマにした一連の短歌は少年飛行兵として六十五年前に丹波の美山で炭を焼いたり厳格な試練を共にしてきた戦友の急逝を弔う一首とお察しします。兵士として厳格な訓練を受けても心中には幼心もまだ残っていた年頃で、お互いに励み合い乍らいたずらもしたでしょう。苦を共にすればする程友情は深まるものです。この中の一人の戦友が前ぶれなく亡くなった知らせの衝撃はどんなに大きかったでしょう。それだけに作者の悲しみも深く「吾に告げずに」との結句に余韻が尾を引きます。

 

夕暮れのロマンチックなる灯点る頃恋人達の楽園となり         蔡佩香

大湖公園をテーマの最後の一首で、この公園がよく整理されて居る場所だと想像されます。草木あり外灯も到る所にあるロマンチックな雰囲気が昏れても去る人又来る人が入り混じって活気のある様子が見えてきます。黄昏は時には人を淋しくさせ、愛情に浸っている人にとっては心を語る雰囲気の充満する頃合でしょう。第三者の目でこの公園の有様を作者は「恋人達の楽園」と定評したのでしょう。

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