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15集-作品評10

鄭埌耀選 その2

不景気の風吹きすさぶ上空を旅客機爆音立てて飛びゆく         游細幼

 飛び立ったばかりの旅客機の爆音が高すぎたので、作者の連想を呼んだ。不景気のさ中、失業や低所得でどん底生活の人達が喘いでいる。あの豪華な旅をしているのはどんな人だろうか、高級商社の社長、ビジネスマン、外国へ物見遊山の観光客、そして高給取りの乗務員。階級意識と言う程の事ではないが、作者はとっさに考えこんだのである。

 

万仏の彫刻店にわれ一人佇みをれば身のひきしまる           姚望林

 台湾は仏、道、俗の混合信仰で、廟では主神の他によその神像をも複数祀ってある。それで仏具店では彫刻した像に夫々に独得の色彩とお仕着せをして陳列してあり、正に万仏のオンパレードである。商品とは知っていても柔和あり獰猛ありの見馴れた表情には、悪い事はしていないが思わず身がひきしまり逃げ出したくもなろう。このユーモアならぬユーモアに覚えのある方は少なくないと思う。

 

さはやかな車窓の美女に見とれしがふいのあくびに慌てて目を伏す    李英茂

 爽やかな車窓に美女、良い構図である。女は美しく見せる義務があり、男はそれを鑑賞する権利がある、などと良い気分になっていたら女がふいに欠伸をした。眠っている美女は睡芙蓉と言うが、欠伸する美女はいただけない。作者は慌てて目を伏せた。これは礼儀でもある。見られた事を知らない美女は今度はより美しい横顔の方を見せたかも知れない。事件付きの楽しい車窓、読者も楽しくなる。

 

吾が名前焼きたる湯呑み掌につつみ杳き日偲び白湯を飲みをり      李錦上

 名前を焼きつけてあるからには由緒のある湯呑みで、作者にだけ値打ちのある準骨董品で常用はできないが、時折棚からおろして愛玩する。大事に手で包んで持ち、昔の日を偲ぶというのであるが、それもコーヒーや茶などで汚してはならない。澄んだ白湯で飲むとは泣けるではないか。誰にでも自分に取って置きの物があるので、この歌は誰にもよく分る。

 

初まみえの片倉フォトに目を見張る凛として走る台湾高鉄        劉玉嬌

 高鉄があってこそ台湾は先進国家なのであるが、時の台湾人政府が手がけた此の大インフラを外省人政党は妨害の限りをつくした。彼等には費用を水増しして利益に与る好機を失い気の毒であったが、今凛然と南北を走る台湾の新幹線、片倉フォトに出た写真に作者は台湾人として得々とこの歌を詠んだのである。

 

「馬」選りし台湾人は愚かだと責むるよりそを糺して欲しき       劉心心

 台湾人が外省人を総統に選んだ、世紀の大奇譚である。台湾人は愚かだと彼等は笑いが止まらない、選挙となると台湾側に不利な規制を作り、里長村長等と呼応して大挙買収にかかる。彼等には利権がかかっていて懸命なので金と嘘に弱い純朴な人達は一たまりもない。金は罰金として取るが票はやらない、これが真の良心、と糺さねばなるまい、こう作者は思ってもいよう。

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