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14集-作品評8

徐奇芬選 その2

歳月は経つれど孫の壁日記らくがきの跡今も鮮やか       陳秀鳳

年を経てやんちゃな孫も生長したが幼い時壁に落書きした跡がまだ残って居ます。消そうと思う時もあれば思い出に残したい心とが二つあると思います。刻の過ぎるのは思うより速く孫よ孫よといとおしかった子らも何時の間に成長して大人になってしまうのです。作者は孫の落書きに過去を偲んで居るのでしょう。

 

嘗て無き厳しき寒波襲ふ夜娘の重ねくるるシルクの布団     陳淑媛

厳冬の夜の寒さは四方八方から襲って来るように寒い事があります。一人で寝て居る母に気を使いシルクの布団をそっと重ねて呉れた娘さんの心の温さがにじんで来ます。作者はこんな心根のやさしい娘さんが居て幸せです。作者は体の温まる前に心が暖められたでしょう。

 

複診で検査よろしく酸素吸ひ三分の二に減らす嬉しさ      陳珠璋

酸素吸入をする程重態だった作者が再診で経過よく吸入を減らされた時のほっとした気持ちが察せられます。人生は楽しい事ばかりではありません。長寿も健康でなければ仕合せとは言えません。一大難関を越した作者の心情が察せられます。

 

諸もろの苦労の記憶彼方去り今はしつかり幸福抱きしむ     陳瑞卿

若かりし日妻として母親としての苦労心労は並大抵の事ではありませんが年とって子らは皆立派に育ち親孝行である仕合せを満喫して居る作者に拍手を送りたいです。今では短歌や川柳を楽しんで居る作者は子育てに成功して有終の美を結ばれたのです。

 

雛祭り童謡流るる町の売り場客呼ぶ娘の笑顔が目立つ      陳清波

童謡を歌う子らや物売りが客を呼ぶ声で賑やかな雛祭りの日の光景です。ここでは笑顔しか見えません。物売りのあいそのいい笑顔、若い娘たちの天真爛漫な姿は作者に大きな感銘を与えました。この光景を見て居た作者が若返りしたように感じたでしょうか。

 

むらさきの友より賜びし傘させば在りし日の笑顔しきり顕ちくる 鄭 静

作者に似合う紫色の傘を呉れた親友が亡くなられその傘をさす度この友を憶う作者の心情がよみとれます。友情とは物質のやりとりでなく心と心のふれ合いだと思います。作者がこの傘をさす度あの世の親友もほほえんで居るでしょう。友情も深くなれば親身より話安く理解出来ると私は体験して居ます。

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