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14集-作品評7

徐奇芬選 その1

寒き夜犬が書斎に入り来て足元にそっとうづくまり寝る     荘進源

静かな寒い夜書斎で作者が読書して居るのか書き物をして居るのかは分かりませんが一人だけの時間と空間を持って居る事に間違いありません。この時飼犬がそっと作者の足元に来てねそべった光景が、その夜の寒さと平常飼犬に注ぐ愛が温かく伝わって来ます。文人のやさしさがこの一首によく表現されて居ます。

 

己が非を不本意ながら認めざる訳にはゆかぬ事もあるかな   田上雅春

日常生活の中に各種の人と接触しなければならない事があります。何かの事で意見がマッチしない時や見方の違う時もあって争論の元になる時平和を保つ為多数決に従わねばならない事もあります。作者は不本意乍らこの日は自分の考え方が否決されたのでしょう。民主の時代故多数決が結果を生みます。己が非を己むを得ず認めなければならなかった心情が伝わって来ます。

 

ベッドからぬけてはメモする五七五往復三回昨日の夜更かし   館量子

会心の笑みが湧く一首です。初めて短歌にふれた新鮮さと面白さに感動した作者は真面目に勉強して居ます。ひょっと浮かんで来た一句を忘れない中にとベッドからぬけ出してメモする事三回、短歌の初心者の真面目な姿が見えて感動しました。この意気込みではやがて一流の歌人になるでしょう。

 

只今と声はり上げて呼んでみたしふるさとの空ふるさとの土に  趙寛寛

長年アメリカに移住しても忘れ得ないのは故郷の空と土です。折にふれ郷愁を覚える作者の切ない心情がそのまま伝わって来ます。空を見上げては故郷を思ひ土を踏めばふる里のあの人、この人を思う作者の姿が浮かんで来ます。

 

ゆるやかに稲は黄金の穂波見せ秋めく小川心まで澄む      張國裕

稲に黄金の穂がついて秋風にゆれて居る様子に見とれて居る作者、近くにあった小川の流れも清く静かで作者の歌心を呼び起こしたのです。実りの秋の一景を巧みに詠まれて居ます。

 

坪庭の二尺の小屋に朝日射し犬はまろみてうららに眠る     陳皆竹

小さい庭に造った二尺の犬小屋に気持ちよさそうに眠って居る小犬を見て居る作者の姿が見えて来ます。朝日が射して浮き立つこの一景は安らかな一日の始まりが想像されます。

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