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14集-作品評6

潘達仁選 その3

ふるさとを逃れて異国に移り住む半世紀前の白色台湾      辛秀蓮

蒋介石が中共に破れて台湾に移民そして敗残兵が武器のない台湾を統治し永続戒厳令を敷き台湾人を恐怖のどん底に陷し入れたのです。その台湾のエリート達は自由を求めて続々と外国へ特にアメリカに移民して行きました。可笑しい事ですが今は台湾でせしめた金でアメリカへ移民して居るのは外省人で、金をばら撒いて総統になった馬総統もアメリカで高級住宅を買い移民の準備をして居るとか、外省人達と既得権利を持つ台湾人はその人神と崇める蒋介石の恨みに反して中共に歩み倚り台湾を売ろうとして居ます。蒋介石はあの世で歯ぎしりして居るでしょうね。

 

信号の青が押し出す人の群杖持つ一人を残して消ゆる      曾昭烈

この短歌を読んだ時私の事を詠んだとの錯覚に捉われました。然しこの様な状況はよく目にする茶飯事で歌壇第十二集の陳英侯氏の歌に似て小さな事乍ら良く観察をして詠みました。私は何時も青信号になると周りの人達が向こうに渡っても足の痛い私は取り残されてうろうろしますので家内ははらはらして居ます。佳作の一首だと思いました。

 

日軍の埋めたると言ふ手榴弾唯一の武器と心して持つ      蘇楠栄

この作品評を書く前後に作者の歌集「南島に息吹く」を頂きました。この歌集に黄教子氏が序を書いて居ますのでさぞかし傑作に満ちて居ると思われます。私は少し目を通しましたが一連の作は彼氏の歌集から抜粋した歌ですので批評は避けます。只この歌で作者は勇敢な方であると分かりました。歌壇に載せるのは未発表の新作と限られて居ります。

 

大雪山層雲峡の滝凍えて魚が顔出し我らを迎ふ         蘇友銘

一連の短歌を読みますと随分と日本国中を歩き回った様ですね。琉球、北九州、東京、そして北海道、この層雲峡は私も一度行った事がありますが観点地が非常に狭い様で、滝は男瀧と女瀧が並んで居ます。只私は作者の様に幸運に恵まれず魚を見る事が出来ませんでした。ハテ? どんな魚でしょうか? まさか鮭ではないでしょうね。一連の旅行詠ですが旅行の憶い出を再思させる短歌です。

 

不器用で嫁に敷かるる長男よ親亡き後は如何に生くるらむ    曹永一

長男が嬶天下で作者が歯ぎしりするのはうなずけます。これは作者が亭主関白だかららしいですね。中国でも季常之癖と言ふ成語がありますから普通ですね。斯ういう妻があって出世した例もあります。又「児孫自有児孫福」とも言います。子孫には我々が知らない福があるという事です。我々が心配する迄はないでしょうね。

 

小学の日々通学の細き道全てが変り商店並ぶ          荘淑貞

六、七十年前私達の時代から世の中は大変変化或いは進歩したと言うべきでしょうか。私は鉱山町の国民学校で当時は一学年の生徒は約百五十名の盛況でしたが今は全校合わせて約四十名と言う変わり様です。然し道路は大分整備されて観光地になって居て昔の面影は全く見られません。こんな状態ですので台湾には「僻村」というのはなくなった様です。これは感に堪えない又深思させる内容の短歌と受け止めました。

此の頃体調が悪く歌会も長いこと欠席して居ますので作品評もこれ限りでご辞退させて頂きます。何時も酷評ばかりして皆様のお怒りを招いたと思いますが正直に思った侭書きましたので悪しからずご許容の程お願い申し上げます。又私としても随分勉強させて頂きました。誌上を借りてお礼申し上げます。

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