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13集-作品評8

潘達仁選 その2

幸せは安穏と子の家に住み四代の囲む夕餉のひととき      陳淑媛

連作の第四首に子らが巣立ちして空しいと言う歌がありますがこの様な歌を詠むのですからもう安閑として居るでしょう。それにしても曾孫と共に四代で夕餉に向かうとは羨ましい限りです。お曾孫さんは幾つになられたのでしょう。そして男か女ですか?作者の相好を崩した顔が見える様です。

 

遠くよりぺタル踏み来る若者の頼もしき影見ればわが孫     陳秀鳳

遠くから来る若者の男々しいそして力強い自転車の漕ぎ方に見惚れて居るのですが近ずくにつれそれが自分の孫だと分かった時の驚きと喜び一入です。孫が頼もしい若者に成長して居るのを今迄気付かなかったのに今改めて発見した時の喜びですね。結句の「見ればわが孫」に籠められた喜びと孫への愛情が強く感じられます。

 

外邦の救援ことはり馬総統被害者の叫び馬耳東風か       陳畯文

八八水災で六、七百人が生埋めになったと言うのにあの馬面総統はアメリカ軍のヘリ五十機の援助を断ったと言う呆れ返るばかりのニュースです。聞いて悲憤に燃えます。ヘリ五十機の援助を受けて居たら或は生埋めになった人の幾許か助けられたかも知れません。実に残念な台湾歴史の一ページですね。短歌ですが結句の「馬耳東風」は少し作為的に感じられます

 

仰ぎ見る今を盛りの山桜日光街道に花咲爺の夢         陳清波

日光街道に桜並木があるのか行った事がないので分かりませんが満開の桜を見上げ乍歩くのは大変ロマンチックですね。そして童話を思い出し乍自分が花咲爺になりお殿様かご褒美にあずかるとは何とユニークな発想でしょうね。山桜ですから花吹雪はないでしょうが読んで居て明るい景色が浮び上がります。

 

露ふふみ紫潤む竹垣の朝顔いで湯に風情を添へて        陳瑞卿

此処で言う朝顔は台湾朝顔の事でしょうね。台湾朝顔は野生で到る所に絡みつきます。電信柱、電線など高い所に上がる習性がある上に繁殖力が強いので生垣は直ぐ覆われてしまいます。若し竹垣丈で外の植物がなければ又とない眺めになりましょう。作者は毎朝草山で朝湯に浸ると聞いて居りますのでこの様な短歌が出来たと思いますが紫潤むとは良い形容ですね。

 

石段を義経堂に登りつつ兄に討たれし若武者悼む        鄭 静

「京の五条の橋の上……」牛若丸の童謡を思い出しました。五条の橋の下に牛若丸と弁慶の人形が立って居ます。義経は平家を滅ぼし頼朝の天下の基礎を作った悲劇の主人公ですがそれ丈に逸話も沢山あります。短歌の中の義経堂は何処にあるのか知りませんが奥羽地方だと想像して居ます。一連皆旅行詠ですが名所旧蹟が詠まれて読む人を旅中に引き込む良い歌だと思いました。

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