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13集-作品評11

徐奇芬選 その2

玄関の淡き明かりに照らされて美しく咲く紅の仙丹       劉伝恵

外から帰って来た作者の目に移った美しい仙丹に心がほっとしたでしょう。花の命は人の力を借りてこそきれいに咲くのです。作者はきっとこの仙丹に心こめて世話して居る事と思ひます。それに報る様に疲れて帰宅した主に微笑んで居るのでしょう。

 

艶きそふ花花の辺に穂芒のつつましく揺るる故里の色に     林聿修

少し長い旅をして居た作者はそろそろ郷愁を感じて居る頃でしょう。だから艶やかに咲く花よりも素朴な芒に心を寄せたのでしょうか。花に癒され穂芒に郷愁を託す余韻たっぷりのこの一首、何回もよみ返しました。

 

人の世は花咲きて散る花畑又生まれ来て華やかに咲かむ     林月雲

人生は花のように咲けば何時かは枯れて散る如く何時かはこの世を去って行きます。この道理を作者はじっくりかみしめて「咲き散る花」とテーマしてこの歌が出来たのでしょう。尤もその通りです。若い時は力一ぱい生き若さを満喫しました。しかし人生には例外なく間もなく「老」がそこに待ち構へて居ます。作者は余命少なき人生を後生大事に生き行くといふ健気な心意気を示して居ります。学ぶべき一首だと思ひます。

 

長かりし単身赴任は妻や子に家庭の温もり欠かせしを悔ゆ    林燧生

何時どこで誰に会ふか予測出来ない事の多い人生です。これが一期一会でしょう。この一期一会の重なりが何時の間人生の一部分になる事があります。そして予期しなかった縁がつながって別の人生が生まれる事もあります。長い単身赴任をされた作者にとってこの経験は多くあり、ストーリーも多かった事とお察しします。人生は時間と駈け比べして居るように死に至るまで止まる事はありません。戦々競々と勤めて居た時期も過ぎ、やっと家庭生活が出来るようになった作者の感慨が「時間との一期一会」のテーマによくマッチして居ると思ひます。これよりのお仕合せをお祈りして居ます。

 

八十路我カラオケのみを娯楽とし火曜日の午後を待ちわぶるなり 林素梅

年取った後家事は大方しなくてもいいので時間があり余る事があります。八十才になってカラオケを楽しむ作者は心身共に健康な方です。歌ふ時は唱ひその合間にはお友達とおしゃべりの時間が出来て時間も早く過ぎるでしょう。何かを期待するその心は若さを表はします。だから作者はまだ若いのです。しっかり頑張って下さい。

 

E世代のパソコン漬けの毛筆蚯蚓の如くパチパチ跳ぬる     林素綿

近代の進歩は私たちの世代にとってとりつく島もない程目ざましくともすると置き去りにされそうな焦りが湧いて来ます。パソコンの便利さとスピードが現代の世情に必須品とされるパソコン、私たちの世代では理解し難く追ひつく可能性もないと言へる現状です。故に現代子は筆を取る事が少なくなり、まして毛筆を使ふ事は滅多にないと言へます。作者はこの現状を憂ひ乍もユーモアに表現して居る所に心を惹かれました。

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